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はじめに
後縦靭帯骨化症(ossification of the posterior longitudinal ligament:OPLL)は全脊椎に生じ得るが,胸椎OPLLは胸椎部が生理的後弯を有し,脊髄血流のwatershedであるため,前弯位を呈する頸椎部,腰椎部と比べ症状進行が重篤で,治療に難渋する.過去に本疾患手術の神経合併症発生率は24〜33%と報告されている3〜5).近年Imagamaら1)が行った多施設前向き研究でも,その発生率は32.2%と高率であった.神経合併症を回避するために術式選択や脊髄モニタリングなどのさまざまな対策が講じられているが,いまだに術中神経障害は多く,本疾患は脊椎外科医が頭を悩ませる難治性脊髄疾患の1つであると考えられている.
術中脊髄モニタリングは術中に脊髄の中枢,または末梢を刺激することで,脊髄伝導路を介した誘発電位の変動を監視する機能診断法である.中でも経頭蓋電気刺激誘発電位〔muscle evoked potential after electrical stimulation to the brain:Br(E)-MsEP〕は運動路を監視することができ,ほかの脊髄モニタリング法である体性感覚誘発電位(somatosensory evoked potential:SSEP)や経頭蓋電気刺激脊髄誘発電位〔spinal cord evoked potential after electrical stimulation to the brain:Br(E)-SCEP,D-wave〕と組み合わせることで,さらに高感度のモニタリングが可能となっている.そこで本稿では,胸椎OPLLに対する術中脊髄モニタリング,特にBr(E)-MsEPの理解と麻痺予防の対策について,われわれが行ってきた多施設研究の結果を中心に述べる.
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