- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
付帯研究16
終末期がん患者の呼吸困難に対する薬物治療において遺族が最も重要と感じるアウトカムに関する研究
伊藤 里美⁎
⁎東北大学大学院医学系研究科
はじめに
終末期がん患者において呼吸困難は頻度が高く,経時的に増悪しうる症状である1~5).終末期には,病状の進行によりコミュニケーションが困難になりうる6).またわが国では,症状緩和と同時にコミュニケーションがとれることが「望ましい死」にとって重要であることが示されている7).
終末期の呼吸困難の治療にあたっては,呼吸困難とコミュニケーションのバランスをとり,患者・家族ごとに望ましい治療目標を設定する必要があるが,望ましい両者のバランスは明らかではなく,患者や家族対象の大規模調査も行われていない.
付帯研究40
終末期せん妄評価尺度短縮版の開発
伊藤 奈央⁎1,内田 恵⁎2
⁎1岩手医科大学看護学部,⁎2名古屋市立大学病院緩和ケアセンター
はじめに
せん妄は,注意および環境に対する気づきの低下を特徴とする急性の意識障害である1).臨床では,「突然患者の表情が硬く険しくなる」「周囲の刺激に過敏に反応する」「点滴を気にするなど落ち着きがなくなる」「何もないところに人や虫が見える」「表情が乏しくぼーっとしている」といったせん妄の症状を呈している患者とかかわる機会は少なくない.
終末期のがん患者の8~9割にはせん妄が生じ,そのうち5~7割は回復しないまま死にいたる2-5).終末期に生じる,回復できないせん妄を終末期せん妄とよぶが,終末期せん妄でも原因によって症状の改善が見込まれることもあるため2,6),適切な評価と治療やケアが重要である.また,終末期せん妄により,患者は苦痛を体験するだけでなく,治療やケアの意思決定および家族や医療者とのコミュニケーションも困難となる.さらに,過活動型せん妄が生じる場合などは,リスクマネジメントの観点から,安全の確保が優先され,患者や家族の苦痛緩和に十分関心が向けられないこともある.せん妄が改善しないまま患者が亡くなることで,大切な人を失う家族のつらさはより深いものになる.
これらのことから,よりよい治療やケアのためには終末期せん妄の評価が重要である.しかし,既存の尺度で終末期せん妄を評価することは困難であり7),終末期せん妄評価尺度が開発された8).この尺度は患者の症状などの結果だけでなく,医療者のケアのプロセスや家族ケアなども評価する24項目の尺度であり,妥当で実用可能な評価尺度であることが示されている.
© Nankodo Co., Ltd., 2024