- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
付帯研究48
終末期がん患者の家族介護者のレジリエンスと死別後の精神的健康への影響に関する研究
清水 陽一*
*Yoichi SHIMIZU:元国立がん研究センター中央病院看護部/がん看護専門看護師
はじめに
緩和ケア病棟に入院中の臨死期にあるがん患者の家族介護者は看取りに向けて強い心理的苦痛を感じ,抑うつ症状が強いことが知られている1).死別を控えた状況では正常な反応として抑うつ症状が強くなる方がいることが経験的に知られている一方で,死別後に大うつ病や複雑性悲嘆のリスクが高い方も一定割合で存在する2).しかし,日本において死別前後における抑うつ症状の変化について明らかにした研究はなく,その実態は不明である.
また,死別前に強い心理的苦痛を感じていた家族介護者の中で死別後に良好な適応に向かう人とうまく適応できずに大うつ病や複雑性悲嘆に陥る人がいる.こういった逆境への適応力に関連した概念としてレジリエンスが知られており,「逆境のなかでもうまく適応し,成長することを可能にする個人的資質」と定義される.レジリエンスが死別前後の抑うつ症状の変化や死別後の心的外傷後成長に影響をしているかどうかを死別前後の縦断調査で明らかにした報告はない.
付帯研究49
がん患者のdying processにおけるイベントやケアと遺族の精神状態との関連についての研究
矢内 美沙*1,羽多野 裕*2
*1Misa YANAI:東北大学大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野博士後期課程
*2Yutaka HATANO:第二協立病院緩和ケア科
はじめに
身近な人の死は,遺族に対して心理的に大きな負担を与える1).過去の研究では,がん患者の死亡前の身体的・心理的な苦痛が高いこと2)や死亡前に積極的な治療(気管挿管,ICU入室など)が行われると,死別後に遺族の抑うつが増加することなどが明らかにされてきた3,4).ただし,このような研究では死亡前に行われた治療は死亡後にカルテを調べたものであることが多く,信頼性が十分ではないといわれていた.そこで,本研究では死亡前に医師が患者の症状や行われた治療を記録し,死別後に遺族にアンケートを行う「前向きコホート研究」という信頼性が高い方法で,終末期がん患者の症状や行われた治療と,遺族の抑うつの関連を検討した.
© Nankodo Co., Ltd., 2022