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はじめに
2014年頃からゲノム医療を推進していく取り組みが始まり,第3期がん対策推進基本計画(2018年3月閣議決定)のなかに「がん医療の充実,がんゲノム医療」が新設された.このことで,ゲノム医療を必要とするがん患者が全国どこにいても,がんゲノム医療を受けられるようにするための体制づくりが進んでおり,がんゲノム医療中核拠点病院などの指定,がんゲノム医療に携わる人材育成,臨床試験や研究の推進など,がんゲノム医療提供体制の整備は一定程度進んできている.2024年9月現在,がんゲノム医療中核拠点病院13施設,がんゲノム医療拠点病院32施設,がんゲノム医療連携病院223施設(うちエキスパートパネル実施可能な施設15施設)が指定されている1-3).各施設の役割について表1に示す.
2019年6月にがん遺伝子パネル検査が保険収載された.これにより,がん遺伝子パネル検査の実施件数は年々増加傾向にあり,これまでに7万人(C-CAT⁎からの情報)を超えるがん患者が検査を実施している3).しかし,これに対応するための管理体制づくりや,エキスパートパネルに参加する医療職の育成が追いついておらず,結果,報告書の返却時期が遅延してしまうなどの課題がある.こうした状況やニーズに対応するために,がんゲノム医療の知識をもった看護師の育成が急務であることは多くの人が認識しているものの,こちらも苦戦している.さらにがんゲノム医療中核拠点病院やがんゲノム医療拠点病院などの指定施設以外で,患者ががん遺伝子パネル検査を希望する場合も多く,がんゲノム医療ができる専門病院だけでなくがん診療を行っている施設全体でがんゲノム医療の知識をもった看護師の育成が望まれている.本稿では,がんゲノム医療連携病院のがん遺伝子パネル検査を希望する患者の支援と看護師の役割について,現状を紹介する.
⁎C-CAT (Center for Cancer Genomics and Advanced Therapeutics):2018年6月,国によって国立がん研究センター内に「がんゲノム情報管理センター」を設置.がんゲノム医療中核拠点病院・拠点病院・連携病院でゲノム解析を行った結果得られる配列情報および診療情報を集約・保管し,利活用するための機関3).
がんゲノム医療を実施している施設の種類と役割施設指定の種類 役割 がんゲノム医療中核拠点病院 がんゲノム情報に基づく診療や臨床研究・治験等の実施,新薬等の研究開発,がんゲノム関連の人材育成等の分野において,がんゲノム医療の質の向上や充実,均てん化等に貢献する がんゲノム医療拠点病院 がんゲノム情報に基づく診療や臨床研究・治験等の実施,新薬等の研究開発,がんゲノム医療に関連する人材育成等の分野において,がんゲノム医療中核拠点病院と協力し,がんゲノム医療の質の向上や充実,均てん化等に貢献する がんゲノム医療連携病院 がん患者のがん遺伝子パネル検査における一連の流れについて,連携するがんゲノム医療中核拠点病院またはがんゲノム医療拠点病院にエキスパートパネルを依頼し,実施できる機能を担う エキスパートパネルを実施することが可能ながんゲノム医療連携病院 自施設でがん遺伝子パネル検査を実施した症例に限り,自施設でエキスパートパネルを実施できる
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