連載 遺族の声を臨床に生かす ~J-HOPE2016(多施設遺族調査)からの学び~ 【3】
患者の環境をめぐる問題 付帯7 患者が終末期に過ごした環境における遺族の経験に関する研究/付帯6 遺族からみた家族内葛藤に関する研究
pp.267-272
発行日 2020年3月1日
Published Date 2020/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango25_267
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付帯7
患者が終末期に過ごした環境における遺族の経験に関する研究
大谷 弘行
Hiroyuki OTANI:九州がんセンター緩和治療科
はじめに
「家で過ごしたい」「病室は個室がいい」そんな患者の言葉を聞いたことがないだろうか.私たち医療者は,終末期医療において,患者が希望する療養の場で最期を迎えることができるよう,可能な限り配慮する.そして,希望する療養の場で患者が最期を迎えられた際には,医療者は「よかったね」と,ほっとする.患者の最期の過ごす場に配慮することは,そこまで大切なことなのであろうか.終末期を過ごす療養の場を患者が切に希望した際,どのような意義がその奥に秘められているのであろうか.また,その希望が叶わなかった場合,その意義に基づいて,私たち医療者は何か工夫する余地はないのであろうか.
付帯6
遺族からみた家族内葛藤に関する研究
浜野 淳
Jun HAMANO:筑波大学医学医療系臨床医学域総合診療医学・緩和医療学
はじめに
家族内の葛藤は入院がん患者の苦痛,寂しさ,見捨てられ感に関係し,介護者の負担感,健康,抑うつ,怒り,悲嘆にも影響するといわれている1–5).そして,家族内葛藤は,多職種で患者・家族のニーズに応えることに悪影響を及ぼし,質の高いend of life careを提供する阻害因子になるといわれている6,7).
また,家族内葛藤は,患者・家族のQOLに影響する可能性があるにもかかわらず,わが国では,緩和ケア病棟で最期を迎えたがん患者・家族に,どのような家族内葛藤が存在するかについて調査した研究はない.
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