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付帯1
持続的深い鎮静に関する遺族の見解に関する研究
森田 達也
Tatsuya MORITA:聖隷三方原病院緩和支持治療科
はじめに
持続的深い鎮静は治療抵抗性の苦痛に対してしばしば行われ,国際的にもガイドラインが整備されている.しかし,死亡まで持続的深い鎮静を行うことは,患者の人間らしさをなくするものであるという意見や,生命予後を短縮する可能性がある場合(生命予後が週・月の単位の場合や,精神的苦痛に対する場合)は積極的安楽死との倫理的区別がむずかしくなるという意見がある1-5).持続的深い鎮静の倫理的根拠は,相応性(proportionality)*であるが,どのような状態をもってして,鎮静を実施することが相応的に妥当であるかは文化や個人によっても異なる.わが国において,持続的鎮静を受ける患者の人間らしさ,適応とする生命予後や精神的苦痛の対応についての患者や遺族の見解は明らかにされていない.患者や遺族の立場から,適応とする生命予後や精神的苦痛はどのようなものなのかが明らかにされることは,相応性の基準を明らかにするうえで有用である.
付帯8
終末期せん妄を患者の家族が評価するための尺度(Terminal Delirium Scale for family caregiver)の開発
内田 恵
Megumi UCHIDA:名古屋市立大学大学院医学研究科精神・認知・行動医学/名古屋市立大学病院 緩和ケア部
はじめに
終末期のがん患者の8~9割にせん妄が生じ,そのうち5~7割は回復しないまま死亡にいたる1,2).終末期のがんや心不全の末期,多臓器不全など,せん妄の原因となる疾患が治癒することが困難な場合にはせん妄からの回復を望むことがむずかしい.このような終末期に生じる治癒不能で回復困難なせん妄を終末期せん妄とよぶ3).せん妄は家族のみならず家族や医療者へも負担となることが知られている.とくに終末期せん妄は患者がどのように人生を終わらせるかという大切な意思決定に強く影響する4).加えて終末期せん妄を生じると患者と医療者のコミュニケーションがむずかしくなり,代諾者としての家族の負担が大きくなる.
自然経過として,死にゆく過程で意識レベルが低下しコミュニケーションできなくなることも多いが,持続的で苦痛を伴う焦燥の強いせん妄を終末期に生じた際には緩和的な鎮静も検討される.意識レベルが低下したり,鎮静をすることで認知機能とせん妄の評価がむずかしくなる5).このような状況を,治癒可能なせん妄の評価を前提として作られた一般的に臨床でよく使用する既存のせん妄評価尺度で評価することは困難である.
加えてせん妄の全般的なマネージメントは患者の残された予後と患者やその家族の価値観に基づくケアの目標によって検討されるが6),終末期せん妄に関しては国内外でその治療やケアについてコンセンサスが得られていない.そのため終末期せん妄に対してよりよい治療やケアを提供するために,まずは終末期せん妄の評価の確立が必要と考えた.また,終末期の患者を評価する際には患者への負担と正確な評価のバランスも検討する必要がある.患者への負担をなるべく少なくするために,われわれは終末期せん妄の患者の家族を対象とした評価尺度を開発することとした.
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