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付帯研究38
遺族の視点でとらえたホスピス・緩和ケア病棟における急変による死亡に関する研究
松坂 早希子⁎
⁎東北大学大学院医学系研究科保健学専攻緩和ケア看護学分野博士後期課程
はじめに
われわれ医療者は,時折まだ大丈夫であろうと考えられていた患者が予期せぬタイミングで亡くなる,いわゆる急変による死亡を経験する.終末期がん患者は,PS (performance status)の低下や,経口摂取量の減少など,全身状態の変化を経て死にいたることが多い1).そして,医師は患者の血液検査データや全身状態をみながら,家族に患者の予後を説明し,家族は患者との死別に対して心の準備をしていく.しかし,思いもよらないタイミングや状況で患者が急変して死亡した場合,家族は心の準備ができないまま患者との別れを迎えることとなる.そのような中で,患者の死亡は,残された家族にどのような影響を及ぼすだろうか.
付帯研究47
鎮静の種類による家族の体験の違い ~プロトコルで規定した調節型鎮静と持続的深い鎮静~
大日方 裕紀⁎1,今井 堅吾⁎2
⁎1北海道大学大学院保健科学研究院,⁎2聖隷三方原病院ホスピス科
はじめに
終末期の患者に対し,耐えがたい苦痛から解放するためにしばしば鎮静が行われる1,2).2002年に実施された日本の緩和ケア病棟で鎮静を受けた患者の遺族に対するアンケート調査では,約5%の家族は鎮静に対して低い満足度であり,約25%の家族は鎮静に対して非常に強い精神的なつらさを感じていた3).医学的な治療法の探求により,2005年に『苦痛緩和のための鎮静に関するガイドライン』が作成され,その後の改定とともに終末期に実施される鎮静は大きく2つのパターンに分けられている.1つ目は,患者の苦痛の程度に合わせて薬剤の投与を調整する「調節型鎮静」で,言語的・非言語的なコミュニケーションができる程度の意識を保ち苦痛の緩和が達成される場合と結果的に意識が低下する場合がある.デメリットは,迅速な苦痛緩和が不十分になる可能性があることである.2つ目は,言語的・非言語的なコミュニケーションができないような,深い意識の低下レベルを保つ「持続的深い鎮静」で,深い意識レベルの低下でなければ苦痛が緩和されないと想定される場合に,確実に苦痛が緩和されるよう薬剤の投与を行う.デメリットは,鎮静開始直後より言語的・非言語的なコミュニケーションが困難になることである.このように,それぞれの鎮静方法には一長一短があり,鎮静のパターンの違いにより患者の家族がどのような体験をし,それをどう評価しているのかはわかっていない.鎮静方法による家族の体験や評価を明らかにできれば,鎮静を施行する際の医療者が行うべきケアの指針になる.
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