連載 遺族の声を臨床に活かす ~J-HOPE4研究(多施設遺族調査)からの学び~ 【#11】
死別と遺族ケア 【付帯研究17】死別が遺族に与える肯定的影響について(加藤 茜)/【付帯研究24】がんで近親者を亡くした遺族の遺族ケア利用の実態(渡邉美和)
pp.385-389
発行日 2023年5月1日
Published Date 2023/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/j_kango28_385
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付帯研究17
死別が遺族に与える肯定的影響について
加藤 茜*
*Akane KATO:信州大学医学部保健学科
はじめに
一般的に,大切な人との死別経験はその後の人生を劇的に変化させる経験である.このような人生に大きな影響をもたらす経験は,外傷体験(トラウマ体験)と呼ばれる.現在,外傷体験がうつ病や不眠,PTSD (posttraumatic stress disorder)など,さまざまな負の影響をもたらすことが明らかとなっている1~3).その一方で,このような外傷体験が人間的な成長(post traumatic growth:PTG)をもたらすという肯定的な側面も指摘されるようになってきた4,5).しかしながら,死別経験後のPTGに関する大規模な調査が日本では行われておらず,その実態が明らかではない.
付帯研究24
がんで近親者を亡くした遺族の遺族ケア利用の実態
渡邉 美和*
*Miwa WATANABE:前東都大学幕張ヒューマンケア学部看護学科
はじめに
がんで大切な人を亡くした遺族は,喪失感や深い悲しみに包まれ,時に病的な抑うつや悲嘆の症状を呈する者もいる1,2).病的な状態とならぬよう遺族の悲嘆からの回復を支援することは重要であるが,日本では遺族ケアの体制は十分ではなく,2006年に実施された遺族への調査によると多くの項目で10%以下の経験率であった3).その後15年ほど経過し,「がん相談支援センター」「遺族外来」などの新たな部門の設置,悲しみからの回復に役立つインターネットや書籍の情報の充実などにより遺族ケアは変化しており,現在の遺族ケアの利用状況を知ることで更なる遺族ケアの発展に活かすことが可能となる.
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