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骨・関節感染症の治療戦略 Ⅴ.治療各論
2.化膿性脊椎炎の治療
胸腰椎化膿性脊椎炎における全内視鏡手術と低侵襲後方インストゥルメンテーションがもたらした新しい治療体系
Surgical treatment for thoracolumbar pyogenic spondylitis using full endoscopic discectomy and less invasive posterior spinal instrumentation
船山 徹
1
,
三浦 紘世
1
,
野口 裕史
1
,
柴尾 洋介
1
,
辰村 正紀
2
,
高橋 宏
1
,
國府田 正雄
1
,
山崎 正志
1
T. Funayama
1
,
K. Miura
1
,
H. Noguchi
1
,
Y. Shibao
1
,
M. Tatsumura
2
,
H. Takahashi
1
,
M. Koda
1
,
M. Yamazaki
1
1筑波大学整形外科
2筑波大学附属病院水戸地域医療教育センター総合病院水戸協同病院整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Faculty of Medicine, University of Tsukuba, Tsukuba
キーワード:
thoracolumbar pyogenic spondylitis
,
full endoscopic discectomy
,
less invasive posterior spinal instrumentation
,
percutaneous pedicle screw fixation
Keyword:
thoracolumbar pyogenic spondylitis
,
full endoscopic discectomy
,
less invasive posterior spinal instrumentation
,
percutaneous pedicle screw fixation
pp.158-162
発行日 2022年4月25日
Published Date 2022/4/25
DOI https://doi.org/10.15106/j_besei81_158
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は じ め に
わが国では近年の高齢化に伴い基礎疾患を有した化膿性脊椎炎の顕著な増加がみられており,整形外科医として本疾患に遭遇する機会は少なくない.当科でもこの20年間に徐々に症例数が増加しており(図1),かつては若年や壮年期に多かった本疾患のピークは現在70歳代と高齢化がみられている(図2).
本疾患は腰椎,次いで胸椎に多く発生する.局所の安静と適切な抗菌薬による保存的治療が原則であるが,保存的治療抵抗性で手術的治療を要する症例も必ず存在する.手術的治療はこれまでわが国では低侵襲手術として経皮的病巣掻爬ドレナージ1),標準術式として前方掻爬骨移植術が選択されてきた2).本疾患に対する脊椎インストゥルメンテーションは海外では古くから行われ3),わが国でも一部の施設から有用性が報告されてきた4~6).しかしわが国では感染例に対するインプラントの使用は原則禁忌とされていたため慎重な意見が多くを占め,広く普及するにはいたらなかった.
近年,本疾患に対する経皮的内視鏡下掻爬洗浄術7,8)の有用性が報告され,当科でも初期の保存的治療抵抗例における最小侵襲手術として頻用してきた9).呼称変更に伴い現在は全内視鏡下掻爬洗浄術として報告されている10).また本疾患に対する経皮的椎弓根スクリュー(percutaneous pedicle screw:PPS)を用いた低侵襲後方インストゥルメンテーションの有用性が報告され11),脊椎手術におけるPPSの普及に伴い,本疾患にも急速に適応が拡大されてきた.
本稿ではそれぞれの治療法における代表例を呈示しながら本疾患に対する現在の当科の治療体系を紹介する.
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