Japanese
English
整形外科外来診療の工夫――診断,保存療法,外来手術 Ⅱ.部位別疾患と保存療法
1.脊椎
骨粗鬆症性椎体骨折で難治例をつくらないための初期マネジメント
Initial management of osteoporotic vertebral fractures avoiding refractory condition
船山 徹
1
,
辰村 正紀
2
,
蒲田 久典
1
,
野口 裕史
1
,
三浦 紘世
1
,
高橋 宏
1
,
國府田 正雄
1
,
山崎 正志
3
T. Funayama
1
,
M. Tatsumura
2
,
H. Gamada
1
,
H. Noguchi
1
,
K. Miura
1
,
H. Takahashi
1
,
M. Koda
1
,
M. Yamazaki
3
1筑波大学整形外科
2水戸協同病院整形外科
3いちはら病院整形外科
1Dept. of Orthop. Surg., Institute of Medicine, University of Tsukuba, Tsukuba
キーワード:
osteoporotic vertebral fracture
,
conservative treatment
,
surgical treatment
,
conservative resistant factor
Keyword:
osteoporotic vertebral fracture
,
conservative treatment
,
surgical treatment
,
conservative resistant factor
pp.84-89
発行日 2024年10月31日
Published Date 2024/10/31
DOI https://doi.org/10.15106/j_besei86_84
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は じ め に
骨粗鬆症性椎体骨折は骨脆弱性骨折のうちもっとも発生頻度が高いとされ1),世界一の高齢化率を誇るわが国では無床診療所から三次救急病院にいたるまで整形外科の日常診療で非常に高い頻度で遭遇するcommon diseaseである.従来,脊椎の圧迫骨折と呼ばれ医師の経験や施設の慣習に基づいた保存療法一辺倒であったわが国の本骨折の診療は,2011年にバルーン椎体形成術が導入され保険適用となったことを契機に,この10年あまりで大きく進歩した.並行して本骨折の診断や評価といった画像検査の研究や保存療法の方法に関する研究もすすみ,次々に開発される新しい骨粗鬆症治療薬の導入と相まって本骨折の診療は「放っておけば治る」時代から「積極的に介入する」時代へと様変わりした.
本骨折には診療マニュアルが存在するが2),いまだに診療ガイドラインは存在しない.そのため患者が最初に訪れることの多いプライマリ診療の現場に新しい知見が十分普及しているとはいいがたい.実臨床においては初期に正しい診断と適切な評価および治療介入がないまま放置に近い状態で急性期が経過してしまい,本来保存療法で治癒したであろう骨折が遅発性麻痺を呈したり,偽関節や後弯変形となったりして,最終的に椎体前方支柱の再建をはじめとする大侵襲の手術を必要としてしまう,いわゆる「難治例」がいまだに後を絶たない3).
患者の運命は初期の正しい診断と適切な評価および治療介入(=初期のマネジメント)の有無で決まる.本稿では,初期の適切なマネジメントがなかった結果「難治例」となった典型例を提示するとともに,「難治例」をつくらないために役立つ三つのポイントを紹介する.
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