Japanese
English
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
は じ め に
MRIやCTなどの画像診断装置に比べて局所分解能や操作性で優る超音波診断装置(以下,超音波)の精度が近年著しく向上したため,痛み・しびれ・可動域制限などの運動器疾患の局所診断,治療1~4)のツールとして,その使用頻度と重要性が急速に増加している.
また,fasciaに対する生理食塩水治療は,1955年のSolaら5),1980年のFrostら6)による局所麻酔薬と生理食塩水との二重盲検試験の報告に端を発し,2016年にKobayashiら3)の局所麻酔薬,生理食塩水と重炭酸リンゲル液による治療効果が比較されている.そのなかでも筋膜性疼痛症候群(myofascial pain syndrome:MPS)3,5,6)は,fasciaの一形態である筋膜に着目した概念であるが,筋膜以外のfasciaも発痛源として注目され始めた1~3).異常なfasciaの病態はいまだ十分に解明されていないが,炎症,虚血,機械的刺激などによりfasciaに何らかの機能解剖学的な変化(筋外膜間の痛み物質の貯留,pHの低下,水分含有量の低下,組織の伸張性低下や組織間の滑走障害,侵害受容器の過敏化,電気生理学的変化など)が生じていることが報告されている1,3,6).このような部位を超音波で観察すると,画像上,層状または帯状の高輝度変化(fasciaの重積像)として観察されることが多く,異常なfascia像とされる1,2).
一方,腰殿部痛の原因7,8)の一つである仙腸関節障害は,多くの例で主病変が後方靱帯領域にある9,10)とされるが,画像機器での異常所見の検出が困難であった.しかし近年,超音波画像で後仙腸靱帯に重積像を認める例2)が少なくないことがわかってきた(図1).また殿部,大腿外側や鼡径部に疼痛やしびれを合併することがわかっている2,9~13).われわれは,仙腸関節障害例に合併する殿部から下肢にかけての痛みやしびれに対して,超音波ガイド下に薬液を局所注入するfascia間の癒着剥離,いわゆるfasciaハイドロリリース1~3)注射(fascia release injection or hydrorelease)を行って,合併症状に関与する部位の検討を行った.
© Nankodo Co., Ltd., 2018