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は じ め に
近年,仙腸関節の人体における重要性が徐々に判明してきている.仙腸関節は脊柱の根元に存在し,体重の約2/3を占める上半身を支えつつ,地面からの衝撃をわずかな可動域で緩和している(図1).これを可能にしているのが仙腸関節の特異な動きである.飛行機や,自動車,免震構造物に多く使用されているダンパーと呼ばれる衝撃緩和装置に似て,衝撃が加わるとロックし,その後に徐々に動き始める1).このような動きで,人体の重心近くに位置する仙腸関節が絶妙な衝撃吸収装置として機能し2,3),直立二足歩行に不可欠な役割を果たしている.
仙腸関節は仙骨と腸骨の関節面で構成される滑膜関節であるが,特に後上部1/3は骨間仙腸靱帯で仙骨と腸骨が靱帯結合をなしている4).このため,仙腸関節の動きは制限され,わずかな関節運動のみ可能である.仙腸関節のような半関節では関節腔の領域に加え靱帯領域が占める割合が多いのが特徴である5).このため,Bernardらは関節腔と後方の靱帯領域の両方を合わせて仙腸関節と定義している6).
仙腸関節疾患には化膿性関節炎,強直性脊椎炎に関連した仙腸関節炎もあるが,大部分は不意の外力や繰り返しの衝撃で生じた仙腸関節の不適合による機能障害(仙腸関節障害)である.関節の機能障害の診断は現在の画像診断技術では困難であり,仙腸関節の微小な不適合も他の関節の機能障害と同様に画像上の異常としてとらえることができない.しかし,関節運動学的アプローチ(arthrokinematic approach:AKA)–博田法に代表される徒手療法において,仙腸関節の動きを正常化する操作が多くの症例で有効である事実7,8)から,関節不適合による障害が存在していることは間違いない.
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