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は じ め に
仙腸関節は,体幹と下肢の間で衝撃吸収装置として機能し,不意の外力や繰り返しの動作により関節に不適合が生じる(仙腸関節障害)1)と,腰殿部痛の原因になる.また,この不適合状態が続くと,慢性的な腰殿部痛の原因になる.現時点で,慢性重症例では骨single photon emission computed tomography(SPECT)/CTで異常を検出できる例があるが2),通常は画像所見に乏しいため,非特異的腰痛症に分類され,適切な診断と病態に対応した治療にたどり着かないことがある.
慢性腰痛症の原因の一つとして心理社会的要因の関与3)が知られている.患者自身の示指で痛い部位を示すone finger test4)で上後腸骨棘(PSIS)をさせば仙腸関節障害がもっとも疑われ,最終的に仙腸関節ブロック(図1)で疼痛が70%以上軽快することで確定診断が可能である5).未診断のまま長期間経過するとほかの慢性腰痛症と同様に心理社会的要因が加わり,仙腸関節障害の治療経過に影響する可能性がある.
筆者らは,診断的ブロックと病態に沿った理学療法を行うことで,運動機能の改善とともに心理社会的評価(表1)である疼痛生活障害評価尺度(pain disability assessment scale:PDAS)6)と自己効力感(pain self-efficacy questionnaire:PSEQ)7)の改善を認めた仙腸関節障害2例を報告した8).一方で,ほかの心理社会的評価のパラメータである不安・抑うつ(hospital anxiety and depression scale:HADS)[anxiety:A・depression:D]9)と疼痛破局的思考(pain catastrophizing scale:PCS)10)は改善しなかった.改善が認められなかった要因として,精神疾患の有無や性格,思考パターン,就労の有無の関与11,12)などの可能性が考えられた.
本研究では,新たに複数の仙腸関節障害例について入退院時に疼痛評価と心理社会的評価を行い,その関係性を評価した.
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