発行日 2016年7月1日
Published Date 2016/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2016291576
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19歳男。競技用自転車を運転中に転倒し、ハンドルで下腹部を強打した。直後から下腹部の疼痛・膨隆が出現し、当院救急外来を受診した。臍下に長径4cmの発赤と、表皮剥離を伴う鶏卵大の膨隆を認めた。腹部造影CTを施行したところ、臍下部で右腹直筋が断裂しており、間隙から小腸の脱出を認めた。また、Douglas窩に少量の腹水貯留を認めた。外傷性腹壁ヘルニアと診断し、入院のうえ経過観察の方針とした。6時間後に腹部造影CTを再度施行したところ、右結腸溝に新たな腹水が出現しており、またDouglas窩腹水の増加を認め、腹腔内出血が疑われた。このため、腹壁ヘルニア修復術および腹腔内の観察目的で緊急開腹手術を施行した。開腹所見は、右腹直筋前鞘と腹直筋が断裂し、皮下に大網の脱出を認めた。また、腹直筋断裂部からの出血と、腹腔内に血性腹水の貯留を認めた。腹腔内を観察すると、盲腸漿膜と右側結腸間膜漿膜の裂傷、S状結腸間膜血腫、腸間膜内の血管損傷を認めた。手術は、裂傷している漿膜を漿膜筋層縫合で修復し、S状結腸間膜の止血を行った。さらに、断裂している右腹直筋前鞘を0-PDS II糸による結節縫合で閉鎖した。術後経過は良好で、第9病日に退院となった。
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