発行日 2015年2月1日
Published Date 2015/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2015167450
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47歳男性。37歳時に胃潰瘍穿孔で広範囲胃切除術の既往があった。今回、かかりつけ医での定期採血にてCA19-9の高値が指摘され、腹部CTを行なったところ、膵尾部に65mm大の嚢胞性病変が認められ、精査加療目的で著者らの施設へ紹介となった。所見では腹部造影CTで膵尾部に65mm大の多房性嚢胞性腫瘤が認められ、造影効果のない嚢胞成分と濃染する充実部分からなり、充実性部分は脾臓の造影パターンと類似していた。腹部MRIでは腫瘤の嚢胞成分はT1強調像で低信号、T2強調像で高信号を示し、充実部分はT2強調像で膵実質より高信号で脾臓と等信号であった。また、拡散強調像では脾臓と同様に高信号であった。一方、超音波内視鏡では膵尾部に隔壁を有する多房性嚢胞性腫瘤が認められ、嚢胞内部はモザイクエコーパターンを示していた。以上、これらの所見から本症例は副脾由来の嚢胞性疾患が疑われたが、CA19-9高値ほか、悪性疾患も否定できないことから治療は手術治療が選択され、膵尾部・脾合併切除術が施行された。その結果、病理所見では膵尾部の65mm大の多房性嚢胞の内容液は漿液性液体で、膵実質内の嚢胞内腔は異型を認めない非角化重層扁平上皮と腺上皮よりなり、嚢胞壁には脾臓組織が認められた。尚、免疫染色では嚢胞壁はCA19-9陽性であり、本症例はこれらを総じて膵内副脾に発生したepidermoid cystと診断、患者は経過良好で術後13日目に退院となった。
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