発行日 2014年11月1日
Published Date 2014/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2015084590
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
79歳男性。貧血の原因検索目的で腹部超音波にて腹水と隔壁構造を持った嚢腫を認め、偽粘液腫が疑われた。著者らの施設へ紹介後、造影CT検査では腸間膜脂肪濃度の上昇ほか、腸間膜に多発する小結節と腹水が認められ、癌性腹膜炎が疑われた。一方、下部消化管内視鏡にて横行結腸癌に対し内視鏡的粘膜切除術が施行されたが、病理診断は高分化腺癌(SM 200μm、ly0、v0、断端陰性)であり、これは癌性腹膜炎の原因病変とは考えられなかった。その後、初診から1ヵ月経過でPET-CTを行なったところ、大網および腸間膜病変へのFDG集積がみられ、更に左胸水の増加と左胸膜肥厚も認められ、腹膜播種ならびに胸膜播種が疑われたが、胸水穿刺による細胞診で悪性細胞はみられなかった。しかし、クォンティフェロン陽性から結核の可能性も考え、喀痰検査をはじめ胸水の培養、結核菌PCR検査を行なった結果、すべて陰性で、この時点では原因不明癌による癌性腹膜炎、結核性腹膜炎、腹膜リンパ腫などとの鑑別が必要と考えられた。以後、最終的には腹腔鏡下腹膜生検の病理組織学的所見で中心部に壊死を伴う類上皮細胞や多角巨細胞からなる肉芽腫と診断されたが、悪性所見はなく、手術検体の結核菌PCRが陽性と判明したことから、術後第2病日目に感染症専門機関に転院し、抗結核薬による治療が開始された。
©Nankodo Co., Ltd., 2014