発行日 2014年9月1日
Published Date 2014/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2015062458
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70歳代男性。数ヵ月前から排便障害がみられ、下血と肛門痛を伴ったため前医を受診、直腸癌の診断にて治療目的で著者らの施設へ紹介となった。初診時、大腸内視鏡では下部直腸に全周性の2型腫瘍が認められ、内視鏡生検では中分化型腺癌であった。また、腹部造影CTでは下部直腸に長径6cmの腫瘍がみられ、腫瘍は右前側で前立腺浸潤が疑われた。以上より、本症例は前立腺浸潤が疑われる局所進行下部直腸癌(T4N1M0)と診断され、局所の腫瘍縮小を期待して術前化学放射線療法(CRT、四門照射法45Gy照射/20回。S-1 100mg/日、4週内服、2週休薬)が行われた。その結果、Grade 1の血液毒性がみられたものの治療を完遂でき、術前治療後には排便困難症状は軽快、全身状態も良好であった。更に術前治療評価では腫瘍縮小率16%であった。以後、この放射線治療終了から4週後に前立腺部分切除を伴う腹会陰式直腸切断術(R2・R0)を施行(手術時間290分、術中出血量563ml、T3N0H0P0、stage II)、切除標本の病理組織学的所見では下部直腸は平坦で、正常粘膜で潰瘍性病変はみられず、術前検査で癌と思われた部分に粘液湖はみられたが腫瘍細胞は明らかではなかった。尚、治療後はT0で、切除断端、リンパ節転移は陰性でstage 0(T0N0M0)であった。目下、術後5年経過で再発は認められていない。
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