発行日 2014年9月1日
Published Date 2014/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2015062459
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74歳男性。66歳時に心筋梗塞に対し左右内胸動脈を用いた冠状動脈バイパス術を受けた既往があった。今回、労作時の胸部不快の精査目的で心臓カテーテル検査を受けた翌朝に上腹部に激痛が出現、腹部CTにて急性気腫性胆嚢炎と診断され入院となった。入院時、心臓カテーテル検査では冠状動脈は#4AV、#6、#13に75%以上の有意な狭窄が認められたが左右内胸動脈バイパスの開存は良好であり、左室の収縮も軽度に低下していたものの検査を通して手技的に困難な場面はみられなかった。一方、腹部CTでは胆嚢壁は全周にわたりair densityを呈し造影効果は認められなかったが、肝内の胆管と門脈に異常なガス像がみられた。更に胆嚢周囲には膿瘍を疑う液体貯留が認められるも、門脈本管や上腸間膜静脈内にガス像はみられず、胸部と腹部大動脈内には粥腫性動脈硬化病変による毛羽立ち像が確認された。以上、これらの所見を踏まえ、かつ腹膜炎および敗血症の併発、高齢で多数の心血管疾患を有し予備力も乏しいことから、治療は経皮経肝的胆嚢ドレナージ(PTGBD)で行われることとなり、全身状態の改善後に待機的に手術を行う方針とした。以後、PTGBDチューブ挿入から13日目、全身状態の改善後に腹腔鏡下胆嚢摘出術が施行された。その結果、切除標本の病理組織学的所見では胆嚢壁全層に及ぶ壊死がみられ、壁内の細動脈には新鮮な血栓に加え陳旧化した血栓が認められたが、術後の合併症はなく、患者は第10病日目に軽快退院となった。
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