発行日 2011年7月1日
Published Date 2011/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2011292668
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50歳代男。検診で便ヘモグロビン陽性と貧血を指摘された。直腸診で肛門縁から6cm口側に全周性の非可動性腫瘍を触知し、腹部造影CTでRs~Ra~Rbに壁肥厚を伴う腫瘍を認め、精嚢との境界は不明瞭で、下部直腸間膜の浮腫が著明であった。精嚢浸潤、リンパ節転移を伴うStage IIIaの直腸癌と診断し、手術単独による根治は困難と考え、狭窄解除のための人工肛門を造設した後にS-1併用放射線療法(CRT)を施行した。S-1は計3クール、放射線照射は2G×20回行い、CRT後6週目の腹部造影CTで腫瘍は縮小し、精嚢との境界は明瞭となり、下部直腸間膜の浮腫も軽減していた。しかし、下部直腸間膜内の微小浸潤を否定できないため、腹腔鏡下Miles手術を施行することとした。腫瘍は腹膜翻転部に存在し、内側アプローチで切除を行った。両側肛門挙筋を露出して直腸を全周性に授動し、自動縫合器で口側腸管を切離し、直腸を摘出した後にS状結腸人工肛門を造設した。病理組織所見で腫瘍は未分化成分を含む中分化腺癌で、CRT治療効果はGrade 1bであった。術後S-1、tegafur uracil投与を行い、1年6ヵ月無再発生存中である。
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