発行日 2014年8月1日
Published Date 2014/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2014298171
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74歳男。嘔気、食欲不振を主訴とした。心房細動による抗凝固療法中であり、脱水による腎前性腎不全にて入院加療していたが、経過中に貧血と右鼠径部痛を訴えた。腹部単純X線検査で鏡面像を認めたため、右鼠径ヘルニア嵌頓によるイレウスと診断して用手的に整復し、右鼠径ヘルニア根治術を行ったところ、術中に腹腔内より血性腹水が大量に流出した。メッシュ・プラグ法で右鼠径ヘルニア根治術を終了した後、血性腹水の原因を検索するために下腹部正中切開で開腹すると、大網が胃壁に癒着し血腫を形成していたため、大網部分切除術を行った。腫瘤は5.0×5.0cmの大網血腫で、腫瘍性病変を認めず、術後経過は良好であった。本症例は腹部所見に乏しく、右鼠径ヘルニアの手術中に大網血腫が発見されたが、血腫の誘因となる外傷を認めないことから、抗凝固薬の関与が疑われた。
©Nankodo Co., Ltd., 2014