発行日 2014年2月1日
Published Date 2014/2/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2014122297
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57歳女。左鼠径部膨隆にて近医を受診、鼠径ヘルニアと診断され、手術目的で著者らの施設へ紹介となった。用手還納は不可能で、超音波を行なったところ、内鼠径輪近傍に腹腔内から連続する脂肪織の脱出ほか、周囲に液貯留が認められたが痛みや腸管の嵌頓はなかった。以上より、本症例は左鼠径ヘルニア嵌頓と診断し手術が施行された。その結果、ヘルニアは直接ヘルニアで内容物は大網と淡血性腹水で、大網の中に母指頭大の弾性硬な腫瘍が認められた。この腫瘍はヘルニア門に嵌頓していたことから腫瘍を含む大網を切除し、Direct Kugel Patchで修復したが、病理所見では線維化を伴う腺癌組織を認め、播種病巣であった。尚、術後は原発巣検索の精査で腫瘍マーカーのCEAとCA19-9が高値で、胸腹部造影CTでは膵尾部に乏血性嚢胞状腫瘤、肝内に多発転移巣、骨盤内に不整形の腫瘤を認め、更に肝表面およびDouglas窩に腹水が認められた。最終的に膵体尾部癌、多発肝転移、腹膜播種と診断され、gemcitabine hydrochlorideを3クール行うも腫瘍マーカー値の著明な上昇を認め、S-1に変更したが、患者は全身状態悪化を来し、術後6ヵ月目に死亡となった。
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