発行日 2012年10月1日
Published Date 2012/10/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2012371428
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
症例は53歳男性で、右下肢のしびれ、麻痺を自覚し、頭部CTで脳腫瘍を指摘された。CTやPETで脳転移・肺転移・縦隔リンパ節転移を有する右腎癌と診断された。右腎摘出術を施行され、淡明細胞癌と診断された。その後、分子標的治療薬などによる化学療法、転移性脳腫瘍に対し、定位脳放射線療法を施行した。上腹部痛を主訴に受診し、CTで小腸重積を指摘され、治療のため入院した。嘔気は認めたが、嘔吐はなく、血圧136/96mmHg、脈拍74回/分で、腹部は上腹部に軽度圧痛を認めるのみで、腹膜炎症状を認めず、全体的に軟で、腫瘤は触知しなかった。血液検査でCRP上昇を認め、腹部CTで小腸に腸重積所見が認められた。腎癌の小腸転移もしくは小腸原発性腫瘍による腸重積と診断したが、遠隔転移を伴う腎癌の状態で、腹痛の程度により緊急手術適応外と判断し、絶飲食で経過観察した。腹痛は改善したが腸重積の解除が得られず、入院12日目に手術を施行した。先進部空腸内腔に弾性軟の腫瘤を触知したため、空腸部分切除術を施行した。回腸末端まで検索し、その他の部位に重積や腸管内腫瘤がないことを確認した。病理組織所見より、腎癌からの転移と診断した。術後経過は良好で、術後9日目に退院し、その後、分子標的治療薬などによる治療を再開したが術後12ヵ月原病死した。
©Nankodo Co., Ltd., 2012