発行日 2012年10月1日
Published Date 2012/10/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2012371429
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症例は60歳代男性で、左下腹部痛、排便時出血で受診し、下部消化管内視鏡検査の下剤内服後より下腹部痛が増強、イレウスの診断で緊急入院した。腹部は軽度膨満、左下腹部に軽度圧痛が認められた。炎症反応の上昇を認め、TP、Albが低下、CEA、CA19-9は正常域であった。下部消化管内視鏡でS状結腸に半周性の不整型潰瘍病変が認められた。痛みのためスコープは深部に挿入できず、直腸RsからRaにかけ全周性の伸展不良があり、同部粘膜は顆粒状で、主病変からの壁外浸潤が疑われた。注腸X線造影でS状結腸に狭窄病変があり、直腸RsからRaに管外性圧迫による伸展不良が認められた。腹部CTでS状結腸に不均一な壁肥厚があり、背側の直腸壁にも肥厚があり、膀胱後壁が肥厚し、S状結腸の腫瘤との境界が一部不明瞭になっていた。骨盤MRIでS状結腸腫瘤腹側では膀胱後壁との境界が不明瞭で、造影後に膀胱後壁の増強が亢進しており、結腸癌浸潤が疑われた。膀胱鏡で膀胱三角左側を中心に粘膜浮腫が著明であった。尿管開口部は両側とも確認できず、尿細胞診はクラス2であった。直腸・膀胱浸潤を伴う進行S状結腸癌と診断し、完全切除のためには膀胱全摘となる可能性があるため、化学療法を先行し腫瘍の減量を図った。S状結腸腫瘤は著明に縮小し、膀胱温存可能と判断し抗癌薬投与から4週目に手術した。人工肛門閉鎖術を行い、再発なく外来通院中である。
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