発行日 2012年6月1日
Published Date 2012/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2012307404
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49歳男。右下腹部の圧痛、反跳痛、筋性防御、炎症反応を認めた。腹部CTで虫垂は周囲脂肪織濃度を伴い著明に腫大しており、急性虫垂炎と診断し緊急手術を施行した。虫垂周囲からDouglas窩に混濁した腹水を認め、虫垂は壊疽性虫垂炎を呈しており、虫垂切除を施行した。切除虫垂に全周性壁肥厚を認め腫瘍を疑ったが、緊急手術のため術中迅速病理検査ができなかった。肉眼的に遺残を認めないため、腹腔内洗浄後にドレーンを留置し閉腹した。切除標本所見は、虫垂中央付近に約20mmにわたる虫垂壁の全周性肥厚とそれによる内腔の閉鎖、その先端側の内は著明に拡張し、高度な炎症を認めた。病理所見では、印環細胞類似の腫瘍細胞が粘膜下層から漿膜下層に胞巣状に増殖し、虫垂断端は腫瘍細胞陰性であったが、免疫組織はchromogranin A陽性であった。以上より、虫垂杯細胞カルチノイド(GCC)とその内腔閉塞による壊疽性虫垂炎と診断した。初回手術後32日にD2郭清+腹腔鏡下回盲部切除術を施行し、回盲部の癒着は軽度で、虫垂断端の後腹膜癒着部は腹膜を切除した。術後5年現在、再発徴候は認めていない。
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