発行日 2012年1月1日
Published Date 2012/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2012214245
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症例1は62歳男で、血便、便通異常があり近医で直腸癌と診断され、手術目的に当科入院となった。下部消化管内視鏡検査の前処置として下剤を内服したところ腹痛が出現し、検査後も腹痛、下血を認めたが、禁食、補液で翌日には改善した。血液検査で炎症反応の上昇と、軽度の腎機能障害を認めた。下部消化管内視鏡検査で直腸Raに全周性の2型腫瘍を認めた。直腸低位前方切除術D3リンパ節郭清を施行したところ、直腸Raに癌腫を認め、さらにS状結腸から下行結腸の漿膜の浮腫状の変化と白苔の付着があった。また、口側切離断端の腸管粘膜は高度の虚血性変化をきたしており、下行結腸まで切除した。切除標本で、7cm長の正常粘膜を介して線状潰瘍が結腸ひもに沿って存在しているのを認めた。外来でcalcium folinate内服を継続し、術後27ヵ月現在健在である。症例2は68歳男で、注腸検査の前処置として下剤を内服したところ、翌日に急激な腹痛が出現したため受診となった。多量の水様便があり、血液検査で炎症反応の上昇を認め、直腸Rbに全周性の壁肥厚と腫瘤形成、口側の腸管の拡張、腹水の貯留を認めた。直腸癌と診断し、腹会陰式直腸切断術とD2リンパ節郭清を施行したところ、腫瘍の口側S状結腸の漿膜面の浮腫状の変化と発赤、肥厚を認め、閉塞性大腸炎と診断した。切除標本で4cm長の正常粘膜を介して線状潰瘍が結腸ひもに沿って存在しているのを認め、その所見は36cmにわたっていた。術後骨盤内に再発し、術後24ヵ月現在治療中である。
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