発行日 2011年6月1日
Published Date 2011/6/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2011219010
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50歳代男。発熱後4日に右側に限局する腹痛が出現し、同部に腫瘤性病変を触知し発症後6日に受診となった。高度の炎症所見、胆道系酵素の軽度上昇を認め、超音波で右側腹部の後腹膜腔に9.2×4.4cm大のモザイク状の低エコー域を認め、膿瘍形成または腫瘍性病変の存在が疑われた。腹部CTで上行結腸の背側に膿瘍形成および膿瘍中央部に高濃度領域を認めた。以上の所見から、上行結腸憩室炎に伴う後腹膜膿瘍の診断で入院となった。絶飲食、補液、抗生物質としてcefotiam hydrochlorideを投与開始した。腹部痛は数日で改善し、入院後7日のCTでは膿瘍は縮小し、食事摂取を開始前に下部消化管内視鏡検査を入院後10日目に施行した。上行結腸背側粘膜に憩室を疑わせる陥凹部と周辺の結腸粘膜の肥厚を認めたが、明らかな悪性所見は認めなかった。退院後は抗生剤cefdinirを内服し、発症後30日に膿瘍はほぼ消失した。9ヵ月後のCTでは上行結腸は単発性憩室を認めるのみで再発所見は認めず、経過観察中である。
©Nankodo Co., Ltd., 2011