発行日 2012年9月1日
Published Date 2012/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2013031676
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60歳代男性。既往として糖尿病、高血圧症、高脂血症ほか、睡眠時無呼吸症候群、逆流性食道炎、十二指腸びらんがあった。今回、感冒様症状を認め、咳嗽を繰り返していたが、上腹部痛を突然自覚、翌日には痛みが増強して救急搬送となった。来院時、腹部全体に緊張や膨満、自発痛(絞られるような痛み)を伴い、上腹部圧痛と反跳痛を認め、腸蠕動音は微弱であった。血液検査所見では炎症反応がみられ、コントロール不良の糖尿病状態が示唆され、凝固系異常も認められた。一方、腹部造影CTでは十二指腸水平部からTreitz靱帯近傍部(空腸角)の腸管壁肥厚と後腹膜腔に腸管外ガス像が認められた。以上より、本症例後腹膜膿瘍を伴う十二指腸穿孔と診断され、緊急開腹手術を行ったところ、術中所見では左側後腹膜腔の出血ならびに腫脹を認め、Treitz靱帯近傍の十二指腸背側(空腸角)には1cm大の類円形の穿孔部が認められ、更に左側腎前面の後腹膜腔には多量の腸液貯留が認められた。そこで、対処として後腹膜腔の十分な洗浄後に十二指腸穿孔の一次閉鎖を行い、胃瘻・胆嚢瘻・空腸瘻の造設を行った結果、高ロリー輸液と経腸栄養の併用で血糖コントロールには難渋したが、術後23日目に経口摂取が可能となり、43日目に退院となった。
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