発行日 2011年1月1日
Published Date 2011/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2011111346
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66歳男。13年前、食道癌(高分化型扁平上皮癌)に対し食道亜全摘術(抜去術)、後縦隔挙上胃管、頸部食道胃管吻合、後縦隔再建術、術後化学療法および放射線治療を施行した。術後8年に胃管潰瘍を発症し、プロトンポンプ阻害薬内服を行ったが、軽快と再燃を繰り返していた。また、原因不明の心嚢液貯留、心不全で数回入院し、保存的治療で軽快していた。術後13年に突然の湿性咳嗽と呼吸困難が出現し、X線で左下肺野の透過性低下を、CTで左背側優位の両肺浸潤影を認めた。抗生物質治療を開始したが、呼吸状態の悪化を認め、気管内挿管し人工呼吸器管理とした。その際、気道内吸引時に胃液、胆汁と思われる分泌物が気管チューブより喀出され、胃管気管支瘻を疑った。上部消化管内視鏡検査を行ったところ、門歯より25cmの部位の胃管内に潰瘍を認め、潰瘍底の一部が管外へ径4cm大の瘻孔を形成していた。内視鏡は瘻孔内を容易に通過し、その先に気管支粘膜を認めた。保存的治療を継続したが、入院6日に死亡し、剖検所見より胃管の潰瘍による左下肺気管支への穿通穿破と診断した。
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