発行日 2009年3月1日
Published Date 2009/3/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2009138547
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82歳男。左胸部腫瘤を主訴とした。机の角で左胸部を強打し、同部にしこりを自覚するようになった。左乳腺E領域に境界明瞭、弾性硬の腫瘤を触知し、マンモグラフィでは境界明瞭、辺縁平滑で分葉した形状を示す、石灰化のない病変を認めた。外傷の既往を加味し、カテゴリー3と判定した。超音波検査では辺縁平滑な楕円形の病変を認め、内部エコーは一部隆起が疑われる部分を認めたが、全体として均一であり、後方エコーは増強し嚢胞性病変と考えられた。穿刺を行ったところ、茶褐色の漿液性の内容物が得られた。穿刺吸引細胞診でクロマチンの増量した異型細胞集団を多数認めたが、細胞集団内に筋上皮様の細胞もみられ、Class IVと判定した。摘出生検を行い、迅速組織検査で浸潤性乳管癌と診断されたため、胸筋温存乳房切除術を施行した。病理診断は嚢胞壁外に篩状に増殖した乳頭腺管癌で、血管が充満した嚢胞内腔にも乳頭状や篩状の増殖像がみられた。現在、tamoxifenを投与しながら経過観察中である。
©Nankodo Co., Ltd., 2009