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症例1は78歳男で、約5年前に右乳腺腫瘤に気づいたが放置していたところ、腫瘤の増大と乳頭の陥凹を認めたため紹介となった。マンモグラフィで微細分葉状の腫瘤陰影の中にわずかに淡い石灰化像を認め、超音波検査で辺縁不整で前方境界線が断裂した腫瘤陰影を認めた。穿刺吸引細胞診でClass Vと判定され、Stage IIAの右乳癌と診断し、胸筋温存乳房切除術を施行した。病理組織学的に充実腺管癌由来の硬癌で、エストロゲン受容体(ER)は陽性、プロゲステロン受容体(PgR)は強陽性であった。ホルモン療法を行うも、術後約3年で両側多発性肺転移が出現したため抗癌薬投与に変更し、投与半年後現在肺転移巣は縮小傾向である。症例2は76歳男で、約10年前より左側の乳頭の肥大、左乳頭の陥凹と乳頭下の母指頭大の腫瘤を認めていたが放置していた。約2年6ヵ月前に早期胃癌で胃切除術を施行し、その経過観察中に乳腺外来の受診となった。超音波では、不整形で内部エコーが不均一の腫瘤像を認めた。穿刺吸引細胞診では、クロマチンが増量し核小体が目立つ異型細胞を認める所見で、Class Vと判定した。また、FDG-PETで左乳房と左腋窩および甲状腺右葉、右上縦隔気管傍部と気管前正中部に集積を認めたことから、Stage IIBの左乳癌および右甲状腺癌と診断された。胸筋温存乳房切除術および甲状腺右葉・峡部切除術+頸部リンパ節郭清を行った。病理組織学的に硬癌浸潤を伴う乳頭腺管癌で、ER+、PgR+++、HER2++の所見であった。第1群リンパ節の4個に転移を認め、甲状腺癌は気管前と左右の気管傍リンパ節に転移を認めた。化学療法とその後ホルモン療法を施行し、術後10ヵ月現在再発はない。
©Nankodo Co., Ltd., 2012