発行日 2007年7月1日
Published Date 2007/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2007290067
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72歳男。患者は既往として約60年前、急性虫垂炎で手術を受け、術後に腹膜炎となったため再手術が施行された。今回、腹痛を主訴とし著者らの施設へ受診となったが、所見では右下腹部の手術痕には手術後から時々開く腸瘻痕が認められた。造影CTでは右腹部を中心として著明に拡張した腸管がみられ、腸間膜の捻転を疑わせる所見と腹水を認めた。小腸軸捻転または絞扼イレウスを疑い、緊急手術を施行したところ、手術中所見では盲環型blind loop syndromeと判明した。本症例は再手術でblind loopが形成され、腸瘻を伴い、時々便汁排出等の症状が繰返されていたのが約60年間放置されていたものと考えられた。そして、その腸瘻が拡張した回腸の減圧を行っていたものと思われた。今回、その腸瘻に便塊が詰まって回腸が著明に拡張し、更に捻転し、腸液が滲み出して腹膜炎を呈した特異な症例であった。治療として便塊を除去し、洗浄ドレナージのみを行った結果、術後経過は良好で、全身状態が改善した4ヵ月後に根治手術が施行された。
©Nankodo Co., Ltd., 2007