発行日 2007年7月1日
Published Date 2007/7/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2007290068
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90歳女。患者は浮腫の出現の後、食欲が低下し、意識障害が出現したため入院となった。所見では血中アルカリホスファターゼ(ALP)、カルシウムの著しい上昇を認め、intact PTH>1000pg/mlと高値であった。また、画像所見では左甲状腺下極近傍に占拠性病変が認められた。以上より、本症例は左下甲状腺腫による原発性副甲状腺機能亢進症と診断されたが、患者は入院中に転倒し、左脛腓骨を骨折した。治療として、まず有症候性であることから手術適応と判断し、腫瘍を摘出したところ、術後第7病日目、intact PTHは正常化した。そしてHungry bone syndrome(HBS)の発症を予想し、術直後からグルコン酸Ca、乳酸Ca、活性型ビタミンD3製剤の投与を開始した。血中ALP値は第6病日目にピークとなり、その後、徐々に低下して術後1ヵ月で正常化した。しかし血中Caは低値が続き、術前には認められなかった心不全による症状の継続、収縮期血圧低下等、HBSは長期にわたって遷延化した。現在、術後6ヵ月を経過で、心不全症状がわずかに認められるが、血圧も安定し、軽快傾向にある。
©Nankodo Co., Ltd., 2007