発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2006321778
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89歳女.患者は排便時出血を主訴とした.初診時,直腸診で明らかな隆起は触知できなかったが,肛門皮膚に不整形の褐色色素斑を認めた.下部消化管内視鏡では肛門上皮後方に黒色扁平隆起を認め,口側は一部歯状線を越えており,肛側は筋間溝付近まで広がっていた.また,FDG-PETでは甲状腺,右肺門部に軽度集積を認めたが,非特異的集積であり,明らかな異常集積は認めなかった.以上より,直腸肛門部悪性黒色腫と診断し,中枢側D3リンパ節郭清を伴う腹腔鏡下直腸切断術を施行した.切除標本では肛門管に2.2×1.7cm大の黒色斑を認め,病理組織学的所見では悪性黒色腫は肛門管の円柱上皮領域,重層上皮領域の双方にまたがり,4.2×2.6cmの範囲に分布していた.更に腫瘍細胞は茶褐色のメラニン顆粒を伴って広範囲に進展し,深達度はmで,脈管侵襲やリンパ節転移は認めなかった.術後1年経過現在,再発および転移の兆候は認められていない

©Nankodo Co., Ltd., 2006