発行日 2005年8月1日
Published Date 2005/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2005264370
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54歳男.患者は上部消化管内視鏡で,胃噴門部後壁小彎側に白苔を伴う潰瘍性病変を認めた.潰瘍辺縁がやや不整であったが明らかに悪性を示唆する所見は認めなかった.CTでは左横隔膜下から脾周辺にガス泡を伴った液体貯留を認め,胃潰瘍穿孔による横隔膜下膿瘍と診断したが,腹部身体所見が上腹部に限局していたこと,全身状態が安定していたことから,保存的治療を行った.入院3日目に組織生検で高分化型腺癌の診断を得て,横隔膜下膿瘍を形成した胃癌穿孔の診断でリンパ節郭清を伴う胃切除術を施行した.病理組織学的所見では,粘膜に限局した高分化型腺癌が広範囲に進展しており,穿孔部の漿膜には線維化と炎症性細胞浸潤を認めるだけで,癌細胞は検出されなかった.術後経過は良好で,術後4年2ヵ月経過現在,再発は認められていない.胃癌穿孔は胃癌症例に1%程度合併する稀な病態で,特に表層拡大発育型早期胃癌穿孔の報告例は少ない
©Nankodo Co., Ltd., 2005