発行日 2014年5月1日
Published Date 2014/5/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00393.2014226266
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86歳男性。66歳時に直腸癌にて直腸切断術の既往があった。今回、慢性的な水様性下痢が出現後、下腿浮腫と体重増加(10kg/6ヵ月)を認め入院となった。入院時、血液検査では中等度の貧血と低蛋白血症がみられ、上部消化管内視鏡では胃体上部から中部にかけて小彎を中心に10cm大の表面凸凹不整の隆起性病変が存在していた。生検にて高分化型腺癌と診断されたが、低蛋白血症を来す原因疾患は認められず、かつ食事摂取が良好にも関わらず下痢・低蛋白血症が改善しないことから胃癌による蛋白漏出性胃腸症が疑われた。そこで、術前アルブミン補正を行わずに手術施行したところ、術中所見では胃体上中部小彎側に10cm大の柔らかい腫瘤が触知されたが、漿膜面の変化は認めず、胃全摘術(D1+α)を施行、切除標本の病理組織学的所見から本症例は乳頭腺管状または絨毛状構造を伴う拡張腺管の目立つ高分化腺癌(tub1)であった。以上、蛋白漏出性胃癌が疑われる場合は低蛋白血症の補正にとらわれず速やかに手術することが重要と考えられた。
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