発行日 2016年11月1日
Published Date 2016/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2017078309
- 有料閲覧
- 文献概要
- 1ページ目
73歳女性。住民健診にて胸部異常陰影を指摘され、呼吸器内科を受診、胸部CTにて両側に多発する結節影を認めた。気管支鏡検査では診断に至らず、生検目的で外科へ紹介となった。呼吸機能検査では軽度の閉塞性換気障害を認め、胸部CTでは右肺下葉S9/10に3.1cm大のスピクラを伴う腫瘤を認めたほか、右肺中葉に0.5cmの小結節を認めた。また、右肺下葉には0.6cmと0.4cmの小結節を認め、左肺では上葉に0.5cm、下葉に0.4cmの結節を認めた。以後、初診から2ヵ月経過の検査では右肺下葉の腫瘤のみ増加傾向を認め、その他の結節には変化はなかった。PET/CTを行なったところ、右肺下葉の腫瘤と右肺門部リンパ節に集積を認めるも、気管支鏡検査では可視範囲に異常は認められなかった。一方、ガイドシース併用気管支腔内超音波断層法で右B9、B10からの擦過細胞診、生検、気管支洗浄を施行したが、生検組織ではリンパ球の浸潤を認めるのみで悪性所見は認められなかった。以上より、本症例は右肺下葉の原発性肺癌の疑いでcT2aN0M0、臨床病期IB期の診断で手術の施行となった。その結果、切除標本の病理所見では右肺下葉結節はinvasive adenocarcinoma(pT1aN0M0、病理病期IA期)で、腫瘍内外に多数認めたリンパ濾胞は濾胞性気管支炎と診断された。術後は経過良好で患者は7日目に退院、肺腺癌は2cm以下であったため補助慮法は不要と判断し、目下は外来で経過観察中である。
©Nankodo Co., Ltd., 2016