胸部外科の指針
心臓大血管手術における手術室抜管の効果
小林 俊郎
1
,
蔵澄 宏之
,
郷良 秀典
,
柴崎 誠一
,
工藤 裕子
,
山内 直子
,
田村 高志
,
重富 美智男
,
益田 宗孝
,
浅井 徹
1済生会山口総合病院 外科
キーワード:
危険因子
,
術後合併症
,
手術室
,
人工心肺
,
心臓血管外科
,
大動脈瘤
,
動脈瘤-解離性
,
早期離床
,
ロジスティックモデル
,
Swan-Ganzカテーテル法
,
心筋虚血
,
後向き研究
,
非体外循環下冠状動脈バイパス術
,
意識監視装置
,
術中神経生理学的モニタリング
,
手術時間
Keyword:
Aortic Aneurysm
,
Aneurysm, Dissecting
,
Catheterization, Swan-Ganz
,
Heart-Lung Machine
,
Early Ambulation
,
Operating Rooms
,
Postoperative Complications
,
Retrospective Studies
,
Risk Factors
,
Cardiovascular Surgical Procedures
,
Logistic Models
,
Myocardial Ischemia
,
Coronary Artery Bypass, Off-Pump
,
Consciousness Monitors
,
Operative Time
,
Intraoperative Neurophysiological Monitoring
pp.971-978
発行日 2016年11月1日
Published Date 2016/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2017078308
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2007年1月~2013年4月に著者らの施設で心臓大血管手術を施行した362例中、死亡例を除く333例を対象に、手術室で抜管するultra-fast-track surgrye(UFT)の安全性と有用性について検討した。その結果、UFT群は224例(男性131例、女性93例、平均年齢72.0±10.0歳)、非UFT群は109例(男性42例、女性67例、平均年齢71.8±8.7歳)で、患者背景として性別、年齢、併存疾患において両群間には差がみられなかった。しかし、腎機能障害、脳血管障害、NYHA分類III度以上、緊急手術の割合は非UFT群で多く、術前の心機能も非UFT群において低下傾向であった。疾患の内訳では非UFT群では大動脈疾患(動脈瘤、解離)が有意に多かった。虚血性疾患群のうち、心拍動下冠状動脈バイパス術はUFT群で有意に多かった。術中因子は手術時間、人工心肺時間、心停止時間で非UFT群が有意に延長していた。しかし、術後因子では飲水開始時間、食事開始時間、ICU滞在期間、術後入院期間はUFT群が短かった。術後合併症では術後再開胸、腎機能障害、新規透析導入、肺炎を認めた症例は有意に非UFT群で多く、せん妄の発症も非UFT群で多い傾向がみられた。再挿管を要とした症例はUFT群では5例、非UFT群では6例で有意差はなかったが、5例中の2例は出血再開胸、2例は術後の脳梗塞発症、1例は原因不明の痙攣重積発作によるものであった。UFTを不能とする術前・術中因子では腎機能障害や脳血管疾患の既往、緊急手術、手術時間および人工心肺時間の長期化があげられた。
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