発行日 2016年9月1日
Published Date 2016/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2016402999
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28歳男性。睡眠中、急に胸痛が出現し、救急搬送後に入院となった。胸部X線像では心拡大や肺うっ血はみられなかったが、心電図の前胸部誘導で起急性期T波増高が認められ、心エコーでは左室内に42×60mm大の腫瘤が確認され、内部は左室壁への浸潤も疑われた。全身CTでは左右頭頂葉に5mm・13mm大の高吸収ほか、左室内、左室壁、両側腎に造影不良域がみられ、冠動脈造影では左前下行枝(LAD)、左回旋枝の近位部に途絶像が認められた。以上から、本症例は腫瘍塞栓による急性心筋梗塞と診断された。脳転移を伴う悪性腫瘍が強く疑われたが、年齢も若いことから、可及的腫瘍切除および緊急冠状動脈バイパス術が施行された。しかし、左室内腫瘍の表層は脆弱で、この部分を切除すると固い腫瘍が確認された。更に腫瘍の一部は心外膜に突出しており、腫瘍の完全切除は不可能と考え、塞栓源となる脆弱な部分のみを切除した。病理組織学的に腫瘍は血管肉腫であった。術後は経過は良好であったが、術後20日目に脳転移の出血をきたし、術後37日目に死亡となった。
©Nankodo Co., Ltd., 2016