発行日 2016年9月1日
Published Date 2016/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2016403000
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66歳男性。前医にてstage IIIの食道癌(T3N1M0)の診断で、右開胸開腹胸部食道切除術+D3郭清+胸骨後経路胃管再建術が施行された。病理診断は高-中等度分化型扁平上皮癌で、退院後は補助化学療法が行われたが、上縦隔リンパ節再発による上大静脈症候群を発症した。再入院となり、放射線治療で対処するも、両側胸水と心嚢液の大量貯留を認め、右室心筋への腫瘍転移が疑われた。その後、血圧低下や起座呼吸をきたし、全身倦怠感も著明となったため、著者らの施設へ転院となった。入院時、胸部X線像では心胸郭比は65%、肺うっ血像と両側肺胸水貯留、右第1弓の突出が認められた。また、心エコーでは左室駆出率は71%で、心室中隔の奇異性運動と大量の心嚢液貯留が認められたほか、右室心尖部に52×17×45mm大の不均一な低エコー領域が認められた。左第5肋間前方小切開で手術を行い、胸骨を挙上し、心膜とともに切開すると、大量の淡血性心嚢液が噴出し、収縮期血圧は70台から140mmHg台に上昇したため、5×5cm大の方形に心膜を切除した。右室表面は不整に隆起して、一部は白色瘢痕で腫瘍病変と考えられた。心膜には癌細胞浸潤がみられ、癌性心膜炎と診断された。術後25日目に前医へ転院となったが、その16日後に死亡となった。
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