発行日 2011年11月1日
Published Date 2011/11/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2012184026
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症例は30歳男性で、咳、発熱および胸部圧迫感を主訴とした。CTで上大静脈と心臓右縁に接して圧排する巨大な多房性腫瘤を認め、前縦隔腫瘤と診断した。腫瘤摘出術を施行し、病理診断は多房性胸腺嚢胞であった。術後3ヵ月に咳と血痰が出現し、CTで心陰影左側に接する腫瘤影を認め、肺動脈内に塞栓像がみられた。多房性胸腺嚢胞について二度の追加切り出し再検査を行ったところ、血管肉腫の診断を得た。その後、肺出血による呼吸不全が増悪し、初回手術から約4ヵ月後に死亡した。剖検で左肺の上下葉間面に径6cm大の腫瘤形成を認め、左肺全体に径1cm大前後の結節が多くみられた。これらの病変の病理診断は血管肉腫であった。以上より、多房性胸腺嚢胞と診断された縦隔腫瘍には微小な胚細胞腫瘍(精上皮腫と一部の奇形腫)と血管肉腫の成分が含まれており、血管肉腫の成分が肺に転移・増殖したものと考えられた。
©Nankodo Co., Ltd., 2011