発行日 2010年9月1日
Published Date 2010/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2010320090
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72歳男。人間ドックの胸部CTで異常陰影を指摘され、炎症性変化の診断で経過観察とし、2年後のCTで肺野陰影に変化はなかったものの、前縦隔に2.0×1.6cmの辺縁・整、境界明瞭で造影効果のある充実性腫瘍の出現を認めた。その3ヵ月後のCTで前縦隔腫瘍は5.0×3.0cmに増大し、内部に複数の嚢胞性変化を認めた。胸腺腫を第一に疑い胸腺全摘の方針とし、術直前のCTでは前縦隔腫瘤と多房性嚢胞は3.5×2.0cmと縮小していた。MRIで腫瘍は前縦隔右側に存在し、T1強調像で低信号、T2強調像で中等度の高信号を示し、内部均一で境界明瞭であった。胸骨正中切開で胸腺全摘術を施行し、腫瘍は胸腺右葉に存在し、右縦隔胸膜と心膜に癒着を認め、浸潤の可能性を疑い同部を合併切除した。摘出標本の病理所見より胸腺原発の類基底細胞癌と診断し、右縦隔胸膜と心膜に腫瘍浸潤は認めず、切除断端は陰性であった。術後は再発予防目的に放射線照射を施行し、12ヵ月経過の現在、無再発で生存中である。
©Nankodo Co., Ltd., 2010