発行日 2010年9月1日
Published Date 2010/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2010320089
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37歳女。高血圧の既往があった。安静時呼吸困難と下肢の浮腫を主訴に受診し、僧帽弁閉鎖不全症(MR)および心不全の診断で入院となった。入院後に心不全症状が悪化して起坐呼吸状態となり、順緊急的に手術を行った。右室左房切開で僧帽弁を観察すると、5本の太い腱索が断裂し、僧帽弁後尖中央弁帆領域全体が逸脱しており、逸脱部を切除・縫合して弁輪形成を行った。経食道心エコーでMRは完全制御され、左室の動きは正常であったが、著明な肺高血圧を来たし、右心系が極端に拡大し、左心系は虚脱している状態となった。人工心肺離脱不能であったため経皮的心肺補助へ移行し、更にICU帰室後にプロスタグランジンI2持続静脈注射投与を行ったところ、第2病日の経食道エコーで左室虚脱の軽快を認め、第4病日にPCPSを、第15病日に人工呼吸器を離脱し、第73病日に独歩退院した。なお、術中肺生検の病理組織所見で器質的肺血管病変は否定的であり、退院時にMR、僧帽弁狭窄はなく、左室機能に問題はなく、肺血圧・血管抵抗とも正常であった。術後1年6ヵ月の現在、MRはなく、肺動脈圧も正常である。
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