発行日 2008年1月1日
Published Date 2008/1/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2008133513
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72歳男。患者は呼吸困難および胸痛を主訴とした。胸部X線では心胸郭比は54%、冠状動脈造影では左主幹部に90%狭窄を認め、造影CTでは上行大動脈から弓部大動脈、下行大動脈にかけて著明な動脈硬化性病変が認められた。また、両側総腸骨動脈分岐部にも石灰化や狭窄病変を認めた。一方、心電図では洞調律で53回/分、V4~V6で非特異的ST-T変化がみられ、頸動脈エコーならびに造影で右内頸動脈入口部に95%の狭窄、左内頸動脈入口部に60%の狭窄を認めた。脳血流の有意な低下は確認されなかったが、治療の選択にあたって人工心肺使用下冠動脈バイパス術は術中不整脈や心機能低下が生じた場合、腹部大動脈、総腸骨動脈の動脈硬化性病変、石灰化病変のため補助循環の装着困難と考え、これを非適応とし、右腋窩動脈送血、右房1本脱血でon-pump beating冠状動脈バイパス術を選択、左鎖骨下動脈に50%狭窄があったため、橈骨動脈-前下行枝、左内胸動脈-鈍角枝への方針とした。その結果、術後は脳合併症は認めず、冠状動脈造影では2本のグラフトは開存していた。
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