発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2007100282
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76歳男。夜間の咳症状が出現し近医にて胸部異常の指摘を受けて、精査、加療目的で入院となる。胸部X線所見では右上肺野に約4×4cm大の薄壁空洞影があり空洞の下部を約2cm大の境界明瞭な結節影が占拠していた。胸部CT所見において右上葉S2内に壁の肥厚をごく一部に伴い全体的には薄壁な空洞病変があり内部に境界明瞭な充実性病変と気腔が存在していた。生検にて腺癌細胞が検出された。右上葉原発腺癌臨床病期IA期(T1N0M0)と診断し全身麻酔下に手術を施行した。病理組織所見において内部均一な白色調充実性病変の周囲に空洞を伴う腫瘍で、充実性部分には紡錘細胞がひそかに存在し多核の異型細胞や一部には乳頭型腺癌の成分もみられた。空洞の内腔面には腺癌細胞が増殖子、壊死は見られず拡張した気腔と考えられた。免疫染色では紡錘細胞はビメチン陽性、パンサイトケラチン陰性で一部の細胞はepithelial membrane antigenに陽性であった。これより肺原発多形癌と診断した。肺門縦隔リンパ節転移はなかった。胸膜浸潤と脈管侵襲を認めた。真菌や結核などの感染症の合併は否定された。術後経過は外来にてテガフール・ウラシル配合(UFT)内服療法を施行している.術後12ヵ月経過の現在も再発はない。
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