発行日 2006年9月1日
Published Date 2006/9/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2007100277
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65歳男。労作時息切れ、咳嗽で受診した。胸部X線像で胸水と心拡大を指摘され心エコーにて高度のARによる心不全と診断された。NYHA分類II度であった。下腿浮腫は認めず、胸骨右縁第2肋間を最強点とするto and fro murmurを聴取した。胸部X線は心胸郭比(CTR)5%で肺野にうっ血を認めなかった。心電図は洞調律であったが、発作性上室性期外収縮を認めた。心エコーでは左室内径は左室拡張末期(LVDd)/左室収縮末期径(LVDs)64/38mmと拡大していたが左室駆出率(EF)は70%と保たれていた。無冠尖か左室側に落ち込んで接合が悪くなっており、同部でARを認めた。また、無冠尖部valsalva洞の拡大と無冠尖先端部に断裂した腱索様の索状物を認めエコー上の逆流は重度ARであった。心カテーテル検査は冠状動脈には有意狭窄を認めなかった。無冠尖valsalva洞の拡大を認めARはSellers分類IV度であった。以上より、大動脈弁閉鎖不全(AR)と診断した。手術は通常のごとく弁を切除し、CarboMedics standard aortic valve 23mmでintra annular位に人工弁置換術を行った。肉眼所見で無冠尖弁尖から大動脈壁の間に遺残下fibrous strandがあり、これが大動脈壁側で断裂していた。切除した弁には硝子化を伴う線維性肥厚を認め、粘液変性の病理組織所見であった。術後経過は良好で、合併症なく術後11日に軽快退院した。
©Nankodo Co., Ltd., 2006