発行日 2006年8月1日
Published Date 2006/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2006302215
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症例は日常生活は介助なしで可能であった91歳の女性で,来院時収縮期血圧は60mmHgであったが輸液とカテコラミン投与で90mmHg台に上昇した.心エコー,胸部造影CTで著明な心嚢液の貯留,左室側壁の貫壁性造影欠損から側壁急性心筋梗塞に伴う心破裂で心タンポナーデの状態と考えられ,緊急手術を行った.出血に備え右大腿動脈から送血管を挿入し人工心肺と接続後,胸骨正中切開で開胸した.心膜を切開すると心臓前面に大量の凝血塊を認めたため,心膜の左側を吊り上げLima sutureを3本かけた左室を挙上しStarfishスタビライザーで心尖部を頭側に牽引して出血点を露出した.心尖部付近に心外膜下血腫があり後側壁枝に平行で線状の約2cmの破裂部を左室側壁に認めた.周囲の心筋は正常にみえ,限局した範囲の心筋梗塞と思われた.出血部を挟み込むように止血し心破裂部全体をタココンブでカバーし,フィブリン糊を撒布しドレーンを挿入して閉胸した.手術時間2時間7分,濃厚赤血球(MAP)血3単位,新鮮凍結血漿(FFP)血4単位の輸血を行った.術後3日にICUを退室し17日に退院した.術後冠状動脈造影では左回旋枝#11に75%の狭窄を認めた.急性心筋梗塞後の左室自由壁破裂は臨床経過よりblow-out型または亜急性破裂に分けられるが,本例では突然発症し,来院時ショック状態であったことからblow-out型の破裂と考えられた
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