発行日 2006年8月1日
Published Date 2006/8/1
DOI https://doi.org/10.15106/J00349.2006302216
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52歳男.29歳時に肺結核,喫煙歴は30~40/日で,38℃台の発熱が出現し胸部X線像で右上肺野に境界明瞭な最大径50mm大の腫瘍陰影を認めた.炎症性肺疾患を疑い,抗生物質の投与を開始したが改善が見られず原因病巣の切除,確定診断のため入院した.炎症所見の著明な上昇を認めたが呼吸機能検査は正常範囲であった.画像所見では,右上はS1b,S2a境界領域に最大径61mm大の比較的明瞭で内部に斑状に低吸収域を伴う腫瘤性病変とその辺縁に粗い石灰化を認めた.経皮的エコーで境界明瞭,内部エコー比較的均一で後方エコーの軽度増強所見,さらに腫瘍内に粗い石灰化を認め炎症性病変の肺膿瘍を疑った.白血球の好中球の著明な増加,抗生物質の効果が得られないことから腫瘍性病変も疑われ,G-CSF産生肺癌などの悪性腫瘍の可能性を疑い血中G-CSFを測定し148(正常値<18.1)Pg/mlと高値を示したため切除術を施行した.後側方切開,第5肋間開胸でアプローチし,右上葉S2を中心に小手拳大の腫瘤性病変を認め,壁側胸膜の浸潤,右下葉S6領域に一部直接浸潤を認めた.穿刺細胞診で非小細胞癌と診断し,右上葉切除および右S6部分切除,壁側胸膜合併切除術を施行した.腫瘍は70×90×70mm大の境界明瞭な弾性硬で割面の性状は黄白色,均一,充実性で貝柱状の様相を呈していた.組織学的に多形癌と診断され,胸壁への直接浸潤縦隔リンパ節に転移巣を認めたため,pT3N2MO,IIIB期と診断された.免疫組織化学的特殊染色でG-CSFを染色したが腫瘍細胞は染色されなかった.術後化学療法を追加し,術後8ヵ月現在,無再発生存中である
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