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1.アメリカの医療制度について
アメリカでは,風邪をひいても,耳が痛くても,もしくは生理が不順でも広範囲の病気を最初にかかりつけ(PCP:Primary Care Provider)が診ます.それで解決しなければかかりつけが専門医に紹介するというシステムが一般的です.また診療行為を行う人は医師だけとは限りません.図1に示しましたように,診療看護師(NP:Nurse Practitioner,ナースプラクティショナー),医師助手(PA:フィジシャンアシスタント),看護助産師,看護麻酔師がいます.看護助産師はピルの処方や内診,看護麻酔師は簡単な手術の麻酔を行う等,NPやPAを含めてかなり独立して診療行為ができます.これらの医師以外の診療師をまとめて,ミッドレベル(MIDLEVEL)とか,ノンフィジシャンクリニシャンズ(NON-PHYSICIAN CLINICIANS:非医師高度診療師)などと呼んでいます.そしてCNS(専門看護師)は,独立した診療師というよりは看護のエキスパートですので,この枠組みに入ったり入らなかったりします.
NPの起源は1965年頃に,当時コロラド州の地方で医師不足があり,保健師が健康相談に対応する過程で,ほとんど診療行為のようなことを患者のニーズがあるから行ったという現実がありました.そこで看護師が自分の経験に基づく判断だけで行うのではなく,対処できる知識と技術を習得するために始まった教育や訓練がNP講座の最初です.同じ頃,医師会がベトナム戦争の元衛生兵を医療に役立てようというコンセプトでPA制度も始めました.その後1970〜80年代にかけて,NPに関する研究が盛んに行われ,医師とNPの能力およびアウトカムはほとんど変わらないという報告が多く出され,アメリカ議会も1981年に「質は同等である」と認めています.また,JAMA(The Journal of the American Medical Association,2000年)という米国医学協会誌に,プライマリケアの診療所において,糖尿病の患者,高血圧の患者,喘息の患者について,かかりつけが医師かNPで差があるかどうか調査した結果,ピークフローメーターとHbA1cは変わらなかったが,血圧はNPのほうが拡張期血圧がわずかに低かった,さらに患者の満足度もほとんどの点において有意差はみられなかったと記載しています.医療の高度化,医療費の高騰なども受けまして,NPの数はどんどん伸び続け,さらに診療報酬も次第に出るようになり,最終的に1998年にはすべての州で,NPの診療行為に対して診療報酬が出るようになりました.2003年に研修医の勤務時間が規制されてからは,急性期でもNPは活躍するようになり,現在は医師の数の1.5割にあたる14万人のNPがいます.
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