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はじめに
平成2年度より中西睦子委員長を中心に研究討論会の3年間のテーマを「看護ケアの評価の枠組み」と定め,活動を開始させた.そしてまずは看護の独自性でもある「日常生活行動の援助」に焦点を当て手探りながら今日迄すすめて来た.
看護の対象別に5つのグループ(慢性,地域,精神,クリテイカル,老人)に分かれての作業であったが,委員会議やコーデイネーター会議などの中で再三,活動の主旨に沿うべく検討や調整が行われた.しかし,グループにより既存の看護理論から演繹的に,あるいはいくつかの理論的概念から独自の枠組を構築したり,帰納的に実際の経験を言語化して精選したりというように,多様なアプローチが展開されてきた.そして2年目にひとまず作った試案をそれぞれの現場で用いてみたり,参加者と討論を重ねた.3年目は,2年間の作業や討論により修正補足された試案を,さらに多面的にデータを加えてその妥当性や信頼性を高めていくことが目的であった.
今回の5つのグループの共通枠組には討論の前提として以下のような4つの性格があった.
1.現場実践の成果の系統立ったデータ化をめざして枠組がつくられたこと.つまり,実際的な目的への貢献が優先されていること.
2.現場実践が特定の理論家のモデルによっていても,構わないこと.
3.医学的治療の効果や身体にそなわっている自然の回復力の影響を排除するものではないこと.
4.しかし,研究デザインを工夫すれば,看護ケア効果をある程度discretelyに出すことも可能であること.
これらの4つを討論の前提に作業は進められて来た.看護の日常生活行動援助については理論的基礎がある部分と,ない部分がみられる.看護においては人間モデルと援助活動の方法論については既存の理論がある.しかし,看護の「生活モデル」は明確ではない.また,「生活モデルに沿ったアセスメントと介入方法論」についての具体的な理論は,まだ明らかにされていないといえよう.
地域グループにおいては,日常生活行動援助のゴールを検討する中で,これらの概念化されていない部分も明らかにしながら検討を進めたいと考えた.ここに,地域グループの研究討論会の3年間の目的と進め方の簡単な経過について報告する.
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