- 有料閲覧
- 文献概要
- 参考文献
Ⅰ.はじめに
看護にとって大切なことは,患者・家族に対し質のよい看護ケアが提供され,健康状態がよりよくなることである.これは普遍的に重要なことであり,看護職の共通認識にもなっていると思われる.また,当然のことであるが,この患者の幅は,決して病気をもつ人だけではなく,また生理的・心理社会的全体としての健康状態も含んでいる.
では,この普遍的に重要なことを実践していくためにはどうしたらよいか.その1つの手段として“看護過程”を活用することが挙げられる.看護過程とは名のごとく,看護のプロセスのことであるが,そこに質のよい看護を提供するという考えが伴って,初めて普遍的に重要な目的を達成することができる.つまり,患者・家族に対して,その患者・家族のニーズに合った個別的な看護が提供され,成果がもたらされているか,この一連の過程が看護の視点からなされているかということが大切である.
しかしながら,現状は実際,このようになっているであろうか.看護過程が形骸化した問題解決過程のプロセスをたどっているのではないだろうか.特に,看護の視点から見るよりも,病気は何か,その病気をもつ人にはどのような問題が生じているかなど,患者の医学的な見地から生じる問題に偏っているのが現状ではないだろうかと,私は体験として感じている.
看護の理念として,看護は“病気”が対象ではなく“病人”が対象であるとはいうものの,○○疾患患者は皆,同一の問題表記になっていたりすると,着眼の主体は“病気”になっていると感じさせられる.同じ病気であっても患者・家族の苦痛は1人ひとりに相違がある.たとえ短期間の入院日数であっても医学的な治療を目的としていたとしても,患者・家族の個別的な生理的・心理社会的な苦しみに焦点が当てられないまま看護がなされる現状こそ,課題なのではないかと日ごろから感じている.
そこで,本来の目的を達成する看護過程を見直し,その過程のなかの1つのステップである“看護診断”の基本的なことについて述べる.
Copyright © 2012, Japan Society of Nursing Diagnosis. All rights reserved.